研究概要 |
日常の生活において我々は一定のリズムで歩くことよりも、頻繁に止まったり、歩き始めたりなどのいわゆる過渡歩行を多用する。したがって、リハビリテーション応用を目的とした歩行研究においては、これらの過渡歩行に関する研究も重要であると考え,解析を中心に研究を行ってきた。その結果,本補助金申請時点で,過渡歩行パラメータが下肢機能レベルと関連があることが示された。 本研究では以上の点をふまえて,(1)転倒を含めた身体能力と過渡歩行との関連性を示すデータの収集・解析,(2)床反力計を用いて作用点変動をリアルタイムに計測し,提示できるソフトウェアの開発,(3)高齢者に比較的多く見られる変形性股関節疾患者の床反力特性を中心とした歩行解析を行った。 上記のうち,(1)および(3)については,歩行開始および通常歩行の2種類の床反力データを測定し,同時に身体各部の座標データ,大腿部の筋電データを測定した。被験者数は変形性股関節疾患者33名,比較対象として健常者22名でとなった。(1)に関しては,歩行開始時の重心位置と床反力作用点の差を中心にデータ解析を行った。この差は健常者と股関節疾患者の間で有意な差が見られた。重心位置に関しては,床反力の数値積分により求めており,フォースプレートだけで下肢機能の能力を評価できる可能性が示唆された。今後は床反力の数値積分による重心位置の計算の信頼性を評価していく。(3)については,変形性股関節疾患者と健常者で鉛直方向と横方向のピークの時間差に違いがあることがわかり,治療やリハビリテーションへの有益な情報が得られた。(2)に関しては,リアルタイム表示のソフトウェアは完成し,データの表示が可能となったが,訓練システムの構築までには至らなかった。今後は,これらの結果を基に,訓練システムの可能性と実現を検討していく。
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