研究概要 |
はじめに:Silent aspirationを否定し、安全に摂食を行うためには、喉頭感覚と反射的咳嗽力の定量的評価が必要である。指標の基準値作成に際し、ネブライザーの種類によって誘発される咳嗽の域値に違いが生じるかについて、健常人を対象に測定を行った。 対象と方法:嚥下障害および呼吸機能障害を有さない健常成人22名を対象とした。平均年齢31.1±9.4歳であった。%VCは、全例80%を超えており、1秒率も全例70%を超えていた。ネブライザーは、REF8900、Millicon S、Vigor mistを使用した。まず、随意的咳嗽のPCFを測定した。2%, 5%, 10%, 15%, 20%, 30%のクエン酸溶液を準備し、それぞれを1から6の番号を記載したネブライザーチャンバーに、クエン酸濃度と無関係にランダムに入れた。また1から6の番号の記載した紙を用意して、番号が見えないようにし、被験者に順番に引いてもらい、その引いた番号順でクエン酸溶液の吸入を施行した。5回咳嗽を生じた時点で終了とし、その時のpeak cough flowを測定した。咳嗽を生じない場合は、30秒吸入を行なった時点で終了とした。各ネブライザー検査およびREF8900による検査の再現性は、1週間以上の間隔をあけて行った。 結果:REF8900による咳嗽誘発域値の再現性は、クエン酸溶液10%以上で全例咳嗽を生じており、クエン酸溶液2%から30%までの誘発咳嗽のPCFの再現性も級内相関係数0.6以上であった。クエン酸溶液10%以上で3種類すべてのネブライザーで咳嗽を生じた。3種類すべてのネブライザーで随意的咳嗽のpeak cough flowは誘発咳嗽のpeak cough flowより有意に大きく、誘発咳嗽のpeak cough flowは、濃度間で有意差は認めなかった。
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