研究概要 |
本研究ではロービジョンの見え方の推定や日常生活行動の予測を行うための視機能検査として活用されているコントラスト感度特性(CSF)について、数字を視標として用いた新しいCSF測定法の開発を目的としている。平成17年度では、数字を視標とした場合に測定されるコントラスト閾値がどれくらいなのか、そして測定値は数字間でどのように異なるかを調べる実験を行うことで、本研究で開発するCSF測定法の基礎資料の収集を行った。 実験では数字視標は0,1,2,3,4,5,6,7,8,9の10種類を用いた。この視標を視角2度の大きさでコンピューターで制御したCRTディスプレイに呈示した。フォントは一般に流通しているゴシック体(平成角ゴシックstd W3)を用いた。背景と視標の輝度コントラストを10段階設定し、心理物理学的測定法の一つである恒常法を用いてそれぞれの数字についてどれくらいのコントラストなら視認できるかを表すコントラスト閾値の測定を行った。被験者は視覚に障害のない健常者9名であり、呈示された数字をキーボードを用いて反応した。 その結果、10個の数字の平均コントラスト閾値は約-1.9であり標準偏差は0.08であった。数字によって測定されるコントラスト閾値には違いがあり、最大値と最小値で約0.15 log unitの違いが存在していることがわかった。これはアルファベット文字を使ったCSF測定チャートであるPelli-Robson chartで採用されているコントラスト変化のステップである0.15 log unitとほぼ同じであった。したがって数字を視標としてコントラスト感度を測定する際には、欧米で現在主流となっているPelli-Robson chartと同様の測定方法の適用が可能であることが示唆された。以上、本年度の研究結果から数字を用いてコントラスト感度を測定することが可能であり、視覚正常者の場合でどれくらいの値になるかの基礎的資料が得られた。
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