本研究では、脊髄神経回路網を積極的に賦活し、正常歩行の再獲得が可能となる歩行トレーニング機器開発と題し、脳卒中患者らを代表とする片麻痺者を対象に、健側の下肢関節運動を患側へフィードバックする装具の開発を行った。 前々年度および前年度までにベースとなる装具の設計および股関節駆動機構、膝関節駆動機構、それらの制御アルゴリズムを構築したので、本年度は統合実験と位置付け、まずは健常者を対象とした実験を行った。その結果、股関節駆動機構が想定していた動作を行うには至らずこの駆動機構の再設計が必要であることが判明した。問題点は、当初予定していた自転車等のペダルと同様なタイミングベルトとプーリを用いた駆動機構において、歩行動作中に脚側装具が体幹部に対して外転し、これにより適切なテンションを維持することが不可能なことが挙げられる。しかしながら、ヒトが装着せず、健側情報を代用するシステムによって駆動実験を行ったところ、問題となる外転動作は生じなかったことから、制'アルゴリズムは有効であったと判断される。 また、本研究から派生倒に得られた点は、歩行運動中の関節角度変ヒに関する1/f揺らぎであるが、興味深い点は、この揺らぎが周波数領域では各関節の差異を認めないものの、立相差が存在することである。これは歩行運動中の神経制御系について、信号強度依存雑音が神経制御系だけでなく、最終出力である運動時のパフォーマンスにまで影響を及ぼしている可能性が示唆される。
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