本年度は歩行環境内の影響について検討し、関連装置調整などを行った。 ロービジョン及び高齢者の照度における歩行時の視覚探索の影響の違いについて実験を行った。通路内の照度を0.1〜500(lx)の幅で変化させ、歩行状況と壁面上の視覚表示物への注視(または顔面方向向け)などの影響について検討した。歩調及び歩行の安静性(ふらつき、手探りなどの行動頻度)及び視覚情報への顔面方向(ロービジョン)及び注視状況(高齢者)について計測し、加齢効果と視覚障害特性の比較を行った。ロービジョン被験者は視野の欠損状況及び視力、夜盲や羞明などの症状に差があった。夜盲及び羞明の明るさに関する感度及び視野欠損状況(中心暗転及び視視野狭窄)の違いにより、視覚情報への顔面向き及び歩行の安定性、また歩行時の不快感・歩きやすさの印象が異なり、それぞれの視覚特性に応じて変化の生じる照度レベルが異なることが明らかとなった。一方、高齢者は低照度において視線の下方への集中、歩調の低下が見られた。これらの結果より、加齢効果とロービジョンの違いが明らかとなった。ロービジョンについては低照度及び高照度を避け、中間的な照度の設定を行うことが重要であり、高齢者については低照度が歩行および歩行時の視覚探索がしにくくなることから、ロービジョンと高齢者双方にとって問題のない視覚情報提示時の照度範囲設定の手がかりを得ることができた。視野欠損の影響における詳細な実験装置については特許出願予定。
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