1.平成18年度は、まず、前年度に収集したIFEL保健体育部門の日本側史料を中心として考察を行った。具体的には、IFEL保健体育部門における開設講座、目的、参加者、講師、受講者の活動、研究成果についての考察である。(1)IFEL保健体育部門の講座は、特設ワークショップを含めて7回開設されており、農業科と家庭科と並んで一番多く開設された。その理由は、保健体育分野として独自に解決すべき課題が山積していたからである。(2)IFEL保健体育部門では、大学で果たすべき保健体育分野に関する事柄が網羅的に研究された。その成果は、大学関係者のみならず、保健体育分野の関係者に影響を与えた。(3)IFEL保健体育部門の成果から、「体育科教育法」という名称をともなった最初の図書が刊行されるなど、戦後の体育科教育研究の出発点として位置づけることができる。 2.次に、IFEL保健体育部門の占領軍側史料(GHQ/SCAP-CIE文書)の収集と分析を行った。IFEL保健体育部門に関してCIE部内報告書から明らかになることを挙げると、次の通りである。 (1)IFELでは開設大学の主体性が強調されたが、IFEL保健体育部門では、CIE体育担当官であるニューフェルドが計画段階から実施、評価に至るまで関与していることが明らかとなった。これまでは、講師としての役割は日本側の資料によって明らかにされていたが、それ以外の側面の一端が明らかとなった。(2)IFEL保健体育部門の受講者によるアンケート調査結果からは、受講者がIFELにおいて学んだことや感じたことなど、IFELの状況と実態が明らかになった。また、アンケート結果の一部には、IFELに対する批判的なコメントが記されており、占領教育政策に対する不満の実態の一部が明らかとなった。
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