骨格筋における機械的刺激のフィードバック機構のひとつである筋感覚神経活動を抑制した場合、筋萎縮と並行してリン酸化27kDa heat shock protein (HSP27)の発現抑制が認められた。本研究では、このリン酸化HSP27が骨格筋のサイズ調節において如何なる役割を果たすのか、small interfering RNA (siRNA)を用いて検討している。初年度はsiRNAを生体導入するために、細胞培養おけるターゲット配列同定および生体内における導入法の検討を行った。ラットHSP27 mRNAの141〜165番目の塩基配列をターゲットとして、siRNAを作成した。siRNAは、インビトロジェン社においてstealthRNAiを受託合成した。ラット衛星細胞にこのsiRNAを、lipofectamine2000を用いて導入し2日間低血清中で培養したところ、HSP27 mRNAの発現レベルが約半分に減少することが確認された。さらにこのsiRNAをin vivoでラットヒラメ筋に注入したが、注入1〜7日目まで顕著なHSP27 mRNA発現レベルの減少は認められなかった。また、スクロース高張液やカルジオトキシンを用いて細胞の破壊に伴い筋線維にsiRNAを取り込ませる方法および、エレクトロポレーション法を用いた検討も行ったが、いずれも顕著な遺伝子ノックダウンは認められなかった。組織化された成熟筋線維では膜性質が未熟な細胞とは大きく異なることが示唆された。
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