研究実績の概要 本研究の目的は、従来通り激運動をマウスに行わせ、脳神経細胞に及ぼす活性酸素の影響を確認し、その機序を探ると共に自由運動も行わせ、ストレスホルモンの関与を探る。平成17年度は、マウスを用いたモデル動物を作成し、海馬神経細胞において抗酸化防御酵素のチオレドキシン(thioredoxin : Trx)、細胞質やミトコンドリアの抗酸化酵素のチオレドキシン依存性ペルオキシダーゼ(mitochondrial protein SP-22)及び酸化修飾タンパク質の4-HNE(4-hydroxynonenal)に着眼し免疫組織化学法を用いて評価した。 トレッドミルにて2つの運動群(HardTraining群:HT群・MildTraining群:MT群)に走運動を行わせ、灌流固定を行い凍結切片及びパラフィン切片を作成した。HE(Hematoxylin-Eosin)染色でHT群における海馬錐体細胞の障害を確認、抗酸化酵素のTrx抗体による免疫染色を行い、さらに細胞質やミトコンドリアの新規の抗酸化酵素のSP-22抗体でも同様に行い、酸化ストレスの神経細胞への障害を調べた。また、酸化ストレスの障害を検出する指標として、酸化修飾タンパク質の一つである4-HNE(4-hydroxynonenal)抗体による免疫染色を行った。また、自発運動も行わせ、ストレスホルモンの脳への影響をHE染色で調べた。 本研究の結果として、HT群にのみ海馬錐体細胞の障害が確認され、その障害部位おいて4-HNE抗体による強い反応を示した。しかしながら、抗酸化防御酵素のTrx抗体やSP-22抗体では、変化が見られなかった。さらに、自発運動群では、海馬錐体細胞において変化が確認されなかった。 以上の結果から、激しい持久運動による海馬錐体細胞障害への要因として、酸化ストレスが関与していると考えられる。しかし、自発運動群では変化が確認されなかったことから、他の要因として強制的に運動を強いられることによるストレス(ストレスホルモン)も否定できない。来年度以降にその関与を詳細に検討し、その機序の解明を目指す指針となりうるものである。
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