研究実績の概要 本研究の目的は、昨年同様に激運動をマウスに行わせ、脳神経細胞に及ぼす活性酸素の影響を確認し、その機序を探った。今年度は、海馬神経細胞において抗酸化防御酵素のチオレドキシン(Trx)、細胞質やミトコンドリアの抗酸化酵素のチオレドキシン依存性ペルオキシダーゼ(SP-22)及び酸化修飾タンパク質の4-HNEに着眼し免疫組織化学法を用いて、さらに、DNAの酸化ストレスのマーカーである8-OHdGを用いて評価した。そして昨年同様に、8方向迷路による記憶行動学習能力も評価した。 トレッドミルにて2つの運動群(HardTraining群:HT・MildTraining群:MT群)に走運動を行わせ、灌流固定を行い凍結切片を作成した。HE (Hematoxylin-Eosin)染色でHT群における海馬錐体細胞の障害を確認した。そして、Trx抗体やSP-22抗体、4-HNE抗体による免疫染色を行い、酸化ストレスの神経細胞への障害を調べ、さらに8-OHdGを用いてDNAの酸化ストレス障害を分析した。また、8方向放射状迷路を用いて、記憶行動学習能力も分析した。 本研究の結果として、昨年度同様にHT群にのみ海馬錐体細胞の障害が確認され、その障害部位で4-HNE抗体による強い反応を示したが、Trx抗体やSP-22抗体では、変化が見られず、8-OHdGも同様に変化が見られなかった。さらに8方向放射状迷路では、両群においてわずかな変化しか確認されなかった。 以上の結果から、激しい持久運動による海馬錐体細胞障害への要因として、酸化ストレスが関与していると考えられる。しかし、記憶行動学習能力では変化が確認さ、機能的には正常であり、神経細胞は障害を受けるが、修復もしくは保護される可能性が示唆された。
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