研究概要 |
本年度は、高齢期にあってもグレリンの成長ホルモン分泌機能および摂食亢進作用は維持されていることを明らかにした。また、その応答性も若齢ラットと差がないことから、ソマトポーズの成因は成長ホルモンの合成減少ではなく、その刺激の低下もしくは分泌刺激に対する感受性の低下であることが推察された。グレリンは、成長ホルモン補充療法にかわる抗老化作動薬として有効である可能性が示唆された。さらに老化モデルマウスSAMPを用いて、グレリンの長期投与による抗老化作用を検討中である。この研究成果の全てをまとめてMech Ageing Dev誌に投稿予定である。グレリンの薬剤としての可能性を検討する上で、その作用機序は重要な課題である。本年度は、すでに明らかにしたグレリンに加えて(Gastroenterology,2002)、消化管由来の摂食抑制物質であるペプチドYYも迷走神経求心路を介していることを明らかにし(Endocrinology,2005)、グレリンは、コレシストキニン等の摂食抑制ペプチドと末梢レベルで機能的に拮抗することによりエネルギー代謝を調節していることを明らかにした(Enodorinology,2005)。投与されたグレリンは、血漿内のエステラーゼによって脱アシル化するため、デスアシルグレリンの作用も重要である。デスアシルグレリンの作用は、中枢においてグレリンと同様に同化に機能することを明らかにした(Enodocrinology, in press)。また、運動時において一過性に生じる成長ホルモン分泌亢進においてグレリンは貢献していないことを明らかにした。しかしながら、運動中におけるグレリンの一過性の減少とそれに続く長時間の減少は、末梢におけるグレリンの需要亢進をを意味し、その重要性を明らかにした(J Enodocrinol Invest,投稿中)。
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