研究課題
サルコペニアの発症メカニズムは未だ明らかではない。しかしながら、加齢動物では運動神経終末が筋線維から脱落する神経筋接合部の変性が報告されており、サルコペニアの発症に関与するのではないかと考えられている。本研究では、神経筋接合部の変性原因が神経栄養因子の発現低下にあると考え、加齢に伴うこれら因子の発現パターンを解析した。サルコペニア発症時期を推定するために、4週齢、24週齢、48週齢の雌性ICRマウスの筋線維横断面積を計測した。遅筋線維の横断面積は加齢に伴い低下した(4週齢と比較して24週齢で5%、48週齢で40%減少)。速筋線維の横断面積も同様の傾向を示した(4週齢と比較して24週齢で4%、48週齢で20%減少)。筋組織の形態的所見として、筋線維の径小化、再生筋線維の出現、細胞間隙の増大(細胞外マトリックスの増加)等が観察された。これらの結果から、加齢の影響は、遅筋線維に大きく現れ、少なくとも48週齢以前にサルコペニアが発症しているものと推測された。次に、骨格筋および脊髄における神経栄養因子の発現パターンを解析した。骨格筋では4週齢のマウスと比較して、48週齢のマウスでBDNFおよびGDNFの発現が1.8倍程度高かったが、NGFおよびCNTFの発現に変化が認められなかった。また、CNTFRαの発現は顕著な減少傾向が認められた。一方、脊髄ではNGF、BDNF、CNTF、CNTFRαに減少傾向が認められた。これらの結果から、加齢に伴い神経筋接合部が変性することにより、BDNFやGDNFの発現が骨格筋側で代償的に高まるが、神経筋接合部の修復には不十分である可能性が示唆される。また、CNTFRαの発現低下は、CNTFのシグナルが細胞に十分伝わらない可能性を示唆している。また、脊髄側の神経栄養因子の発現低下は、運動神経細胞の生存に影響を与えているものと考えられる。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
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