わが国におけるスポーツ文化の特異性は、特にそのスポーツ観にみられることは、先行研究等から明らかにされてきた。「道の思想」、「精神性の湾曲」、「集団内での人間関係」、「勝敗に対する価値観」、「教育的価値の強調」等のスポーツ観の多くは、伝統的な日本文化や日本人論あるいは伝統的な身体的競技というものを基礎としながら、特に、近代におけるわが国の社会的背景によって強化されてきた。近代において、スポーツと「道」を結びつけ、その精神性において技術の習得や勝敗観を強調し、イエや家父長制を基盤とし、集団での上下関係や帰属意識を強調した。また、スポーツの教育的側面を強調することによってスポーツを「体育」として教育制度に組み込み、社会的承認を得た。こうして、近代におけるスポーツを取り巻く様々な動きによって創りあげられたスポーツ文化が、わが国におけるスポーツ文化の特異性として語られ、強調されたのである。 現代におけるスポーツは、近代以降の急激な社会変化に影響され、その様相を大きく変化させている。近代において創りあげられ、強調されたスポーツ文化は少なからずその影響を受けることとなっている。今日の社会的変化を支えるグローバリゼーションは、常に国際社会を基準とする眼をもたらした。スポーツにおいても、国際的競技レベルの追求や日常的スポーツ環境の整備あるいはスポーツ組織、集団の専門家等の変化を促している。しかしながら、現時点において、こうしたスポーツのグローバリゼーションと呼ばれる動きは、スポーツの制度的、物質的文化の変化を促してり、精神的文化として創出、強調されたわが国スポーツ文化の特異性への影響は小さく、緩やかなものであると考えられる。
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