肥満、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病は増加の一途をたどっており、その発症機序の解明と予防法の開発が待たれている。動物性脂肪量の増加が生活習慣病の発症の一因であることから、油脂の質(脂肪酸組成)に関する研究が盛んに行われている。 魚油には、抗肥満、耐糖能改善効果のあることが明らかにされているが、一方で、高度不飽和脂肪酸の過酸化の問題があり、魚油を多量に摂取した場合には、肝臓中の過酸化脂質濃度が増加することが報告されている。しかし、魚油含量の違いによる生体内における過酸化脂質生成量の違いや過酸化脂質の脂肪組織、筋肉、肝臓に及ぼす影響については検討されていない。 そこで、これまで我々は、食餌中の魚油含量を変化させ、肝臓中過酸化脂質量との関連を検討してきた。脂肪エネルギー比10%、30%、50%という異なる魚油含量の餌をC57BL/6Jマウスに摂取させ、肝臓中過酸化脂質量を調べたところ、魚油含量が多くなるに従って増加した。一方、魚油含量が増加するに従って、空腹時における血中インスリン値は低下したが血糖値は変化しなかった。しかし、摂食時のインスリン値は空腹時と同様に低下したが血糖値も上昇した。また、魚油含量50%においては、膵臓からのインスリン分泌は減少し、血中アディポネクチン値も低下した。 以上の結果から、肝臓中過酸化脂質量が増加しても、空腹時におけるインスリン感受性は良好となるが、膵臓に障害が起こり、摂食時にはインスリン分泌量が追いつかずやや高血糖となることが示唆された。過酸化脂質量が直接的にインスリン感受性や膵障害に影響を及ぼしているのかについては、さらに検討が必要である。
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