本研究では、β_3アドレナリン受容体(AR)遺伝子変異を保有する肥満小児と保有しない肥満小児との間で、内臓脂肪面積、運動時の中性脂肪分解反応、体脂肪率、血清脂質性状の比較・検討を行い、β_3AR遺伝子変異の保有が小児における内臓脂肪型肥満の形成、運動時の脂質分解能の低下、全身体脂肪量の過剰蓄積、脂質代謝の異常に関与するか否かを明らかにすることを目的とした。 平成17年度に実施した研究では、7〜12歳の男女小児33名(平均年齢9.8±1.3歳)を対象に、身長、体重、肥満度、腹囲、殿囲、空気置換法による体脂肪率と体脂肪量、MRIによる内臓脂肪面積と皮下脂肪面積、収縮期血圧と拡張期血圧、血液分析による総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数、尿酸値、血糖値、アポ蛋白質、インスリン、レプチン、β_3AR遺伝子を解析・検査した。 β_3AR遺伝子の変異型を保有する小児は7名、正常型を保有する小児は26名であり、β_3AR遺伝子の変異型を保有する小児では、肥満度(変異:28.4%、正常:15.3%)、体脂肪率(変異:34.7%、正常:27.1%)、内臓脂肪面積(変異:22.6cm^2、正常:14.4cm^2)、皮下脂肪面積(変異:170.4cm^2、正常:119.9cm^2)、拡張期血圧(変異:108mmHg、正常:99.4mmHg)、インスリン(変異:14.1mg/dl、正常:11.4ml/dl)が高い値を示す傾向が認められた。 今後は、肥満小児と非肥満小児に対する検査を増加させ、β_3AR遺伝子変異を保有する肥満小児の形態特性、糖・脂質代謝性状、動脈硬化進展状態を明らかにする算段でいる。また、学会発表ならびに原著論文の執筆を行う予定である。
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