食品含有ビタミンB_<12>(B_<12>)の吸収については、食品によってその形状や物性または、B_<12>結合タンパク質の性質などが異なり、それぞれの食品および調理方法ごとに検討する必要がある。消化吸収能が低下した高齢者では、低タンパク質症と同様にB_<12>レベルが低下し、循環器疾患の危険因子であるホモシステイン濃度が血中で上昇することが知られている。さらに近年、このような高齢者においては食品中でタンパク質と結合しているB_<12>の吸収率が極めて低いことが報告された。昨年度は、サバおよび鶏卵を用いて種々の調理を行い、さらに胃内人工消化試験を行って、遊離するB_<12>量をゲルろ過および微生物学的定量法を用いて決定した結果、サバを用いた研究では、生のサバと水煮後のサバでは、消化後の遊離状態に全く反対の傾向が見られた。つまり、生試料ではつけ汁にはタンパク結合型のB_<12>が多く溶出し、固体消化後に遊離型B_<12>が多く検出された。また、水煮試料では、煮汁には遊離型B_<12>が多く溶出し、固体消化後には結合型B_<12>が多く検出された。さらに、鶏卵を用いた実験の結果、ゆで卵の卵黄(B_<12>は、卵黄に局在している)や全卵の凝固液では、生卵や希釈後加熱卵液よりも胃内消化を受けにくいことが分かった。しかし、遊離の有無に関しては、さらに詳細に条件検討をおこなっていく必要性が見られ、大変興味深い結果が得られた。 本年度は昨年の結果を踏まえ、サバの煮汁に遊離のB_<12>が多かったことから、今年度はサバ節および鰹節のB_<12>の存在形態について検討した。その結果、サバ節や鰹節からとった出し中に含まれるB_<12>の多くが遊離型であることが示された。さらに、鶏卵については、希釈加熱凝固させた食品について、全卵使用時と卵黄のみの使用時の比較を行ったところ、卵黄のみ使用時の方が、胃内消化を受けやすく容易に遊離型となることが示された。これらのことから、B_<12>の吸収には、サバ節や鰹節の出し汁や卵黄のみを用いた茶碗蒸しなどの調理が有効であると考えられた。また本年度は、これまでB_<12>が含まれていないと考えられていた野菜にも肥料由来のB_<12>が含まれている可能性があることから、そのB_<12>の存在形態についても併せて検討をおこなった。野菜類については現在検討を続けている。
|