在宅高齢者の家庭内事故と急病に関する実態把握を行った。 1.O市の救急隊出動記録データベースから家庭内事故および急病による救急出動依頼を受けたデータを抽出し、在宅高齢者の家庭内事故と急病の特徴について分析を行った。高齢者特有の傾向に着目して、他の年齢層との比較を行った結果、高齢者の救急出動件数は事故、急病ともに季節変動が顕著であり、両者とも冬季に増加していた。他の年齢層では事故と急病ではそのピークとなる時期に差異が見られるのに対し、高齢者の場合、事故と急病による救急出動の増減時期が類似していた。高齢者の事故傾向を判明させることによって、在宅高齢者の家庭内事故については、予測不可能なAccidentというよりも、Injury preventionの観点から、その傾向と事故予防対策を実施していくことの意義が確認できた。 2.S県の在宅高齢者の異常死体に関する調書を用いた家庭内事故および在宅での病死に関するデータベース化を依頼し、その統計処理および分析を行った。その結果、在宅高齢者の死亡事例については救急隊出動記録をデータベースに検討した結果とは、若干異なる結果が見られ、データベースの特質があらわれた。この調査では、死に直結しやすい状況を見て取ることができた。すなわち、発生時期、場所、事故または疾患の種別などの組み合わせにより、在宅高齢者の死亡状況の傾向が判明した。特にこの数年では自宅で病死する高齢者の割合が増加しており、今後は在宅虚弱高齢者の事故情報収集と在宅環境調査を続行していく予定である。
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