本研究では、吸湿性の異なる衣服素材による生体への影響が性周期によってどのように修飾されるかを明らかにすることを目的とする。本年度は、皮膚血管反応(血管収縮および拡張両システム)が女性の性周期によっていかに影響されるかを皮膚血流-発汗連関による評価方法を用いて実験を行った。 実験は、健康な成人女性8名を被験者とし、性周期の低温期と高温期にそれぞれ1回ずつ測定を行った。温熱負荷は生活環境シミュレータ室内(気温25±0.5℃、湿度45±3%RH)で座位姿勢による45分間の下肢温浴(水温41℃)とした。測定項目は皮膚温6点、直腸温、皮膚血流量3点、局所発汗量2点、主観的申告(快適感・温冷感)とし、着衣は綿100%の半袖Tシャツ、半ズボンを用いた。 「皮膚血流-発汗連関」評価方法は、熱負荷時に生ずる温熱性発汗の増加と皮膚血管の拡張反応の相互関係から、皮膚血管の活動を受動的血管拡張と能動的血管拡張に分離して解析を行う方法である。この評価方法で解析した結果、受動的血管拡張による血流量の増加が、被験者8名のうち5名が胸部で、6名が前腕部で、低温期に比べて高温期で大きくなった。一方、能動的血管拡張による血流量の増加は、胸部(5/8名)、前腕部(6/8名)で、高温期では小さくなった。 以上の結果から、高温期では、発汗開始までの血管収縮神経の活動が低下し、発汗開始後は汗腺活動に伴う血管拡張システムの活動が低下したと考えられる。すなわち、皮膚血管反応における受動的血管拡張と能動的血管拡張の両メカニズムともに性周期により影響されることが明らかになった。
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