本研究では、吸湿性の異なる衣服素材による生体への影響が性周期によってどのように修飾されるかを明らかにすることを目的とした。 実験は、健康な成人女性7名を被験者とし、性周期の低温期と高温期にそれぞれ1回ずつの測定を吸湿性の異なる素材の衣服を着用して計4回行った。環境条件は、気温24±0.5℃、湿度45±3%RH(生活環境シミュレータ室内)とし、温熱負荷は、座位姿勢による40分間の下肢温浴(水温41℃)とした。測定項目は皮膚温6点、直腸温、皮膚血流量3点、局所発汗量2点、主観的申告(快適感・温冷感)とした。実験着は綿100%とポリエステル100%の半袖シャツ、半ズボンを用いた。解析方法は「皮膚血流-発汗連関」評価方法を用いた。この評価方法は、熱負荷時に生ずる温熱性発汗の増加と皮膚血管の拡張反応の相互関係から、皮膚血管の活動を受動的血管拡張と能動的血管拡張に分離して解析を行う方法である。 結果、直腸温は低温期よりも高温期で有意に高くなり、その差は綿着用時で0.28℃、ポリエステル着用時で0.15℃であった。皮膚血流量は、右手指で高温期に有意に低く、皮膚温は、胸部で高温期に高くなったが、前腕部では逆に高温期に低くなった。「皮膚血流-発汗連関」評価方法で解析を行ったところ、閾値発汗量は、綿、ポリエステル着用時ともに胸部、前腕部で低温期よりも高温期に高い傾向がみられ、ポリエステル着用時の前腕部では有意差を示した。皮膚血流増加感度は、綿では高温期に低く、ポリエステルでは逆に高温期で高い傾向を示したが、有意な差は得られなかった。よって、吸湿性の異なる両衣服素材において、皮膚血管反応における閾値発汗量や能動的血管拡張が、性周期により影響されることが示めされた。
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