本研究では、要援護高齢者が地域との相互関係を築くための一つの方法として、要援護高齢者が生活の中で「役割」を実感できるようなケアを行うことが重要であると考えている。本年度は、特に、要援護高齢者と子どもとの関わりを促すケアによって、要援護高齢者が「役割」を実感できるのではないかという視点で調査を行った。(1)独居高齢者へのコミュニティサポートによる「役割」構築について、(2)施設高齢者へのインタージェネレーションケアによる「役割」構築について、(3)アメリカにおけるインタージェネレーションケアの理論と実践について、を把握するために訪問調査を行った。 訪問調査の結果、要援護高齢者の生活に「役割」を作るためのケアは、(1)高齢者が暮らしを継続するための活動を行う、(2)高齢者と介護者との対等な関係性を作る、(3)高齢者が面倒をみる相手を作る、(4)高齢者が次世代に文化を継承する機会を作る、(5)高齢者が気持ちを癒される相手を作る、(6)高齢者が地域で暮らしていると実感できる機会を作る、という内容に分類できた。そのなかでインタージェネレーションケアは(3)〜(6)の取り組みに該当した。本年度の調査において把握したインタージェネレーションケアでは、‘計画性と継続性のある日常生活での交流'は、高齢者と子どもの関係性を作りやすくし、高齢者・子どもにとって継続的な効果があるように見受けられた。インタージェネレーションケアでは、子どもの存在によって、高齢者は孤独や退屈を感じない生活を送ることができたり、子どもに対する自らの役割を見出すことができたりする。また、子どもは高齢者との関わりによって、高齢者を尊敬する人や教えてくれる人、遊び相手や助ける相手と捉えるようになる。要援護高齢者と子どもとの関わりを促すケアは、要援護高齢者が「役割」を実感できる方法の一つとして有効であると考える。
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