大豆イソフラボンの抗アレルギー作用のメカニズム解明を目的として、β-ヘキソサミニダーゼ活性(脱顆粒の指標)およびロイコトリエンB_4(アラキドンサンカスケードの指標)放出量が測定可能なマスト細胞株の実験系確立を試みた。マスト細胞株はRBL-2H3およびPT-18細胞を用いた。各細胞株の細胞膜表面IgEレセプターの発現量は、RBL-2H3で95%以上、PT-18で90%以上であった。IgEと抗原の架橋結合による細胞刺激の結果、RBL-2H3は脱顆粒されたが、PT-18はされなかった。PT-18の細胞内β-ヘキソサミニダーゼ活性を測定した結果、PT-18はRBL-2H3と同程度のβ-ヘキソサミニダーゼを顆粒内に有しており、PT-18をカルシウムイオノフォアで刺激した場合は脱顆粒されたこと、PT-18のIgEレセプター発現量が90%以上であったことから、PT-18はIgEレセプターからのシグナルが伝達されていないと考えられた。今後、PT-18を用いた実験系を確立する場合には、マスト細胞からの脱顆粒促進作用を有するフォスファチジルセリンを添加する、IgE-抗原刺激下で脱顆粒が惹起される細胞をクローニングするなどの手段が必要であると考えられる。 RBL-2H3およびPT-18のIgE-抗原刺激下におけるロイコトリエンB_4放出量をHPLCで測定した結果、ロイコトリエンB_4は検出されなかった。この結果は、マスト細胞株にはロイコトリエンB_4の基質となるアラキドン酸がほとんど含まれずロイコトリエンB_4が産生されなかったためと思われる。従って、アラキドン酸を添加して培養したマスト細胞を用いることにより、ロイコトリエンB_4が測定可能になると考えられる。今後、アラキドン酸の至適添加条件などについて検討する必要がある。
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