研究概要 |
カロテノイドは油脂の酸化を抑制する効果があるといわれている.もし効果があるとすれば,食用油脂や油脂含有食品の酸化防止やカロテノイド吸収帯における油脂の過酸化物価油脂の測定に応用できると考えられる.平成17年度は光を遮断した40℃の条件化で油脂を酸化させ,カロテノイドの酸化抑制効果およびカロテノイド吸収帯を利用した過酸化物価の測定について確認を行なった. 試料には大豆油(和光純薬製)を用いた.カロテノイド(和光純薬製)濃度を変えた油(0〜80ppm添加)をビーカーに入れ,マグネティックスターラーで撹拌しながら,光を遮断した40℃の恒温装置において保存し,経時的にサンプリングを行った.スペクトルの測定には本補助金で購入した吸光スペクトル測定装置を用いた.サンプリングした試料をガラスシャーレに入れて,白色セラミック板の上に載せて,外光を遮断した暗箱内に設置し,反射強度のスペクトルを測定した.得られたスペクトルデータの対数の逆数をとってスムージング処理後,2次微分し解析を行なった.過酸化物価の測定はWheelerの変法によって行なった. その結果,過酸化物価を従属変数,いくつかの波長(382,400,483nm)における2次微分値を独立変数として,過酸化物価を予測する回帰式を得た.この式によれば標準誤差20%程度で,過酸化物価0〜100程度を推定することができた.しかし,カロテノイドの初期濃度の影響が大きく,大豆油以外の油に応用することはできなかった.また速度解析を行なった結果,カロテノイドの酸化抑制効果はないことが分かった.これは従来の定説とは異なる結果であって,さらに研究を深める必要がある.今回の測定によって得られた波長はカロテノイドの吸収波長でもあるので,データの信頼性を得るため,カロテノイドの色の影響を受けない波長領域でも検討を行なう予定である.
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