若齢(6週齢)および老齢(20ヶ月齢)C57BL/6nマウスに実験的に低蛋白食(5%蛋白食)を与え蛋白質エネルギー栄養障害(Protein-energy malnutrition;PEM)を誘導し、全身および腸管免疫系の変化を検討した。対照としてコントロール群には20%蛋白食を与えた。またジフテリアトキシン(DT)を腹腔内注射しDT抗原特異的免疫反応についても検討した。1、若齢マウスにおける検討:血清アルブミン、体重、糞抽出液中総IgA・DT特異的IgA、脾臓リンパ球増殖反応において低蛋白食群はコントロール群と比較し、有意に低値を示した。また腸上皮間リンパ球(Intra-epithelial lymphocyte:IEL)においてもCD8α^+/TCR_Yδ^+T細胞数の減少傾向が観察された。一方血清中の総IgA・DT特異的IgAでは、低蛋白食で有意に高値を示し、糞便抽出液中IgAとは逆相関が認められた。2、老齢マウスにおける検討:血清アルブミン、体重、糞抽出液中総IgA・DT特異的IgA、脾臓リンパ球増殖反応において、若齢マウス同様に低蛋白食群はコントロール群と比較し有意に低値を示した。しかし血清中の総IgA・DT特異的IgAでは、低蛋白食により有意に低値を示し若齢マウスとは異なる影響が観察された。また老齢マウスにおいては低蛋白食群とコントロール群の両群において、乳酸菌(NCC533株)摂取により糞抽出液中IgA値、脾臟リンパ球増殖反応が増強され、低蛋白食群においてのみ血清アルブミン、体重が増加された。以上の結果よりPEM状態による免疫機能低下における腸管免疫機能やリンパ球サブセット変化との関連性が示され、さらに加齢によりPEMによるIgA産生系への影響が異なる可能性が示唆された。また乳酸菌摂取がPEM状態における免疫機能を増強し感染症予防に有効である可能性が示された。
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