昨年度の研究で、ブロッコリーやハトムギ若葉にヒト血管内皮細胞の接着因子発現抑制作用があることを見出したことから、これらの食品に含まれる代表的なポリフェノール化合物について接着因子発現抑制作用を検討した。また、抗酸化作用と発現抑制作用との関係についても、検討を加えた。 ポリフェノール化合物として、カテキン、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECG)、エピガロカテキンガレート(EGCG)、ケルセチン、ケンフェロールを用い、TNF-αを用いてVCAM-1を惹起させ、ELISA法で評価した。結果は発現抑制率として算出した。 その結果、VCAM-1発現率は、最終濃度10μMで、EGCG、ケルセチン、ケンフェロール、最終濃度25μMでECG、EGCG、ケルセチン、ケンフェロールに抑制作用が認められたが、カテキン、EGCではほとんど認められなかった。また、過酸化水素障害に対する細胞生存率(抗酸化作用)とVCAM-1発現抑制との間に相関関係は認められず、ポリフェノール化合物のVCAM-1発現抑制作用は、抗酸化作用には依存しない可能性が示唆された。 そこで、VCAM-1発現抑制作用をもっとも示したケルセチンを用い、VCAM-1発現に関わる核転写因子NF-κBの活性化抑制に対する影響を蛍光顕微鏡を用いて検討した。その結果、ケルセチン(最終濃度10μM)の添加により、NF-κBの活性抑制作用が認められた。従って、VCAM・1発現抑制作用には、NF一κBの活性抑制がかかわっていることが示唆された。
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