研究概要 |
大腸内容物中の炭素(C)/窒素(N)比変動に伴う大腸発酵変動を検証するため、大腸に供給可能な窒素源の創製を試みた。タンパク質(大豆分離タンパク質(SP)、フェザーミール(FM)、ツェイン(ZE))にペプシン処理およびパンクレアチン処理を行い、難消化性タンパク質(RP)を調製した(それぞれSRP,FRP,ZRP)。得られたRPの溶解度は異なり、SRP>FRP>ZRPの順であった。 上記で得られたRPにより大腸内のC/N比を変えたときの大腸発酵の影響をin vitroで検証した。基本培地にC源にペクチンを、N源に上記のRPを添加し(C源:0.1%,N源:タンパク質として0.05%)、ラット盲腸内容物の希釈液を接種菌液とし、嫌気バッチ培養を行った。その結果、SRP添加によるN源の供給はペクチン単独による発酵に比べ、短鎖脂肪酸生成が有意に増加し、短鎖脂肪酸組成比も変動した(酢酸11%増加、プロピオン酸72%増加、酪酸21%増加)。しかしながら、FRP及びZRP添加によるN源の供給は短鎖脂肪酸生成にSRP添加ほど寄与せず、寄与度はSRP>FRP>ZRPであった。これはRPの溶解度と一致した。 次にin vivoにおける大腸N供給の大腸発酵に対する影響を明らかにするため、大腸供給C源にペクチンを、N源に上記のRPを添加した飼料をラットに与え検証した。その結果、ペクチンのみを与えたラットに比べ、SRPをペクチンと同時に与えたラットで盲腸内の短鎖脂肪酸生成量は増加し、特に酪酸は有意に増加した。FRPおよびZRPの添加では有意な短鎖脂肪酸は認められなかった。以上より、溶解度の高いRPであるSRPは短鎖脂肪酸生成(特に酪酸生成)を亢進させる窒素供給源となることが示唆された。
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