研究概要 |
昨年度の研究により大豆難消化性タンパク質(SRP)をペクチンと同時に投与することにより、短鎖脂肪酸生成(特に酪酸生成)を亢進させることを示した。今年度の研究では、大腸内容物中の炭素(C)/窒素(N)比変動に伴う大腸発酵変動と大腸内細菌叢の変動の関係を検証するため、SRPの投与量を変動させたときの大腸発酵の変動と大腸内細菌叢パタンの変動を検証した。 まずSRPにより大腸内のC/N比を変えたときの大腸発酵の影響をin vitroで検証した。基本培地にペクチンを1%とSRPをタンパク質量として0.125,0.25,0.5%となるように添加し、ラット盲腸内容物の希釈液を接種菌液とし、嫌気バッチ培養を行った。その結果、SRP添加量に依存して短鎖脂肪酸生成(特にプロピオン酸および酪酸の生成)が有意に増加した。このときSRP添加量に依存してアンモニア生成量が増加したが、SRP添加量が多い場合発酵途中からアンモニア量が減少し、生成されたアンモニアが細菌によりN源として利用されている可能性が示唆された。 次にin vivoにおけるSRP供給の大腸発酵と腸内細菌叢に対する影響を明らかにするため、ペクチンを5%、SRPを1.25ないし2.5%添加した飼料をラットに与え検証した。その結果、ペクチンのみを与えたラットに比べ、SRPをペクチンと同時に与えたラットで盲腸内の短鎖脂肪酸生成量は増加した。腸内細菌叢はペクチンを投与したラットでコントロール食を与えたラットに比べ、異なるクラスターを形成したが、SRPで大きなクラスター変動は認められなかった。しかし、ペクチンを投与したラットでは見られない細菌種のバンドがペクチンとSRPの同時摂取ではみられた。この結果、SRPの投与で一部の細菌種が活性化する可能性が示唆された。こめ変化が大腸発酵の変動に寄与しているかもしれない。
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