研究概要 |
アブラナ科植物に特有の辛味成分であるイソチオシアナートは,アミノ酸の共存下においてチオヒダントイン化合物に変換される。これまでに行ったモデル実験の結果から,実際に食品中においてもチオヒダントイン化合物が生成することが推測された。アリルイソチオシナアート(AITC)は,ワサビやカラシのフレーバーを付与する香料として加工食品に広く利用されていることから,AITCを含む食品(ワサビ風味の調味浅漬,ワサビのり,ワサビ漬け)を材料としてチオヒダントイン化合物の分析を試みた。これらの加工食品のメタノール抽出物を調製し,シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて分画後,AITCと各種アミノ酸より調製したチオヒダントイン化合物を標品としてLC-MS分析を行った。その結果,調味浅漬中にAITCとグルタミン酸の反応物であるATH-Gluが,のり佃煮中にはATH-GluのほかにATH-Val,ATH-Phe,ATH-Leu(それぞれバリン,フェニルアラニン,ロイシンとの反応物)の生成が確認され,食品中にチオヒダントイン化合物が生成することを初めて明らかにした。合成標品との比較から,含量は調味浅漬で0.3 1nmol/ml調味液,のり佃煮で1.9 8.9nmol/gであった。また,ATH-Val,ATH-Phe,ATH-Leuが検出され,それらの含量は0.3 3.1nmol/gであった。
|