研究概要 |
これまでに報告された味センサは主に,生体膜の主成分の一つである脂質を含有した人工膜に,味物質を吸着させる方法を採用しており,ヒトの味認識機構を模倣した大変優れた手法である.一方,メンテナンスフリーを期待する食品工業分野において,味を評価するためには,有機的手法を使用せず,これまでに市販されている計測機器の物理的指標から評価することも重要であると考えられる. そこで申請者は極力メンテナンスフリーとなる味センサの開発を目指し,脂質を含有した人工膜を必要とせず,再現性がよく,高感度かつリアルタイムな測定が可能である超音波と表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance : SPR)に着目した.超音波は,医用ならびに物性研究にも多用されている.SPRは,物質表面近傍における試料の屈折率(誘電率)変化を光強度変化として高感度にとらえることが出来き,医学分野でも使用されはじめている.これらのことから,味の識別・評価に超音波と光の同時計測から得られたデータの融合,すなわちセンサフュージョンを行うことで,単一のセンサからは得られない高度な味の認識・判断機能を工学的に再現できる可能性があり,味センシング技術への新たな提案になると考えている. 上記のことを踏まえ,本年度は以下の研究を行った.味溶液に対して超音波とSPRから得られるデータは,どちらも溶液の物性値であるが,この物性値から食嗜好と評価に向けた味センシングへの可能性を検討し,基礎的な知見を得ることが出来た.
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