研究概要 |
本研究の目的は,聴覚障害児における数学的推論と表現の一般化と形式化に伴う困難性とその克服のための具体的方策を明らかにすることである。そのために,平成17年度は次の目標(1),(2)の課題解決に取り組んだ。 目標(1)数学的推論と表現の一般化と形式化の記述方法の開発 目標(2)記述された数学的推論と表現の一般化と形式化の分析方法の開発 これらの2つの課題解決については,文献のレビューと教室観察を行ってきた。文献のレビューは全米数学教師協議会の2000年に出版された推論と表現に関する数学教育研究の特集号を中心に行ってきた。併せて国内の先行研究についてもレビューを行ってきた。その中で明らかになってきたことは次の2点である。第一に,推論には演繹的推論,帰納的推論,類比的推論があるが,それぞれの推論の特性との関連での一般化や形式化の様相の記述が必要であるということである。第二に,推論と表現の一般化や形式化が実質的に図られたかどうかを明らかにするような記述のアイディアやくふうの検討が必要であるということである。記述方法の開発に向けて,教室観察も行ってきた。また,教室観察については,聾学校の教室の特徴を明らかにするためにも,聾学校に限らず普通学校の算数・数学の教室観察を行ってきた。また,間接的な観察だけでは限界があったので,直接的な観察を行うためにも試行的に実験授業を行ってきた。 今年度の研究の成果と課題を踏まえ,来年度は次の目標(3),(4),(5)の課題解決に取り組む。 目標(3)一般化・形式化される数学的推論と表現の文脈の記述と分析 目標(4)一般化・形式化される数学的推論と表現の文脈の共有プロセスの記述と分析 目標(5)一般化・形式化される数学的推論と表現の文脈の共有プロセスへの教師の働きかけの記述と分析
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