研究概要 |
本研究は,農村地帯に放棄された水国を,ビオトープとして,学校教育や社会教育の材料として維持・管理し,活用していくシステムを確立していくことを目的としている.フィールドは,平成17年度と同様,越前市(旧武生市)黒川町の休耕田を用いた.このエリアは,武生西部地区と呼ばれ,ナミゲンゴロウやハッチョウトンボのほか,アベサンショウウオなどの希少種が数多く残存する地域として有名である.環境省が全国から4つ選定した「里山保全モデル事業」の1つにもなっている場所である.フィールドとなった休耕田の管理を始めてから,今年で3年目であるが,徹底したあぜ道補修や草抜きの結果,環境の大きな変化は起きていない.希少種であるナミゲンゴロウは,確実に世代を繰り返している.トンボ類でも,ヤブヤンマやマルタンヤンマなどの,いわゆるニューフェイスが分布するようになり,種多様度は確実に増している.現在のところ,パイオニア種の消失は見られず,生息する昆虫類の種数は,単純な増加傾向にある.今後も,追跡調査が必要である. 里地保全で最も重要と言うべき,地元の協力は相変わらず強く得られている.アベサンショウウオに代表される希少種の保護活動が,住民の意識を高めているのは言うまでもないが,それから派生して,外来種の駆除などにも協力を得られている.同地域では.研究代表者の提案で,オオクチバスの駆除が行われた.ただし,アメリカザリガニの分布拡大傾向が見られ,注意が必要である. 他地域に位置する休耕田との比較の調査を前年に続き,継続した.北陸における水資源の豊かさは,本州太平洋側や四国,九州と比べて際だっており,ビオトープ造営や維持・管理に関しては,大きな強みであることが改めて示された.
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