エネルギー・環境問題は21世紀の大きな社会問題の1つであり、科学・技術と社会の関連を深く考える必要がある問題である。これらの問題に対する一般市民の問題意識の向上が叫ばれており、学校教育からの有効なアプローチが期待されているが、現状では、様々な教育手法が模索されている段階である。本研究では、学習者間で問題を話し合うことにより問題意識を高めるために「グループ議論」に着目し、議論のコーディネータの役割を果たす人間に対して、議論のコーディネートを支援する手法の提案を目指し、ファシリテータが、議論の進行状況を容易に把握でき、議論の調整が必要な場面の認識を行なうための支援方法の提案、および提案方法を用いたコンピュータシステムの開発を目的とする。 本年度、具体的には、以下の手順で研究を実施した。 (1)グループ議論をファシリテートする際に重要だと思われる観点を、統計的に処理できるデータを中心に、抽出した。 (2)ファシリテータが議論の状況を把握するための評価軸を検討し、教育分野で用いられているルーブリック(学習者の状態を数段階に設定し、具体的に記述したもの)を利用し、評価基準を定めた。その際、議論テーマや、教師の重点ポイントが異なることが想定されるため、柔軟性のある仕組みを設計した。そして、議論状況をファシリテータに提示する手法を設計し、提案手法に関して、海外発表を行った。 (3)提案した支援手法に基づく、ファシリテータを用いた議論評価支援ツールの作成に向けて、提案手法に基づく設計を行い、コンピュータを利用したソフトウェア(システム)として開発した。 (4)開発したシステムを用いて、実際の学校の授業時間に、実験授業を実施し、ファシリテータ支援ツールを担当教師に利用してもらうとともに、別途10人程度の被験者を対象とした実験を行なった。
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