研究概要 |
本年度は,17年度に実施した栃木県内の小学校における習熟度別学習の実態調査の結果を元に,教科「算数」において,学習者の能力に応じた段階的な学習が行えるとともに,学習者同士の学びあいを支援する機能を持つ教材を作成し,その学習効果を検証してきた. 開発した主な教材には,(1)かけ算九九の習熟を図ることを目的に,教材画面上に提示される問題(全10問)の回答の速さと正確さを他の学習者(最大4人)とリアルタイムで競争できる教材,(2)基本計算(加算,乗算)を繰り返し練習することを目的に,81マス計算(縦9マス,横9マス)用のソフトウェア教材,(3)念頭計算を練習することを目的としたパズル型の教材がある. 教材(1)の特徴は,オンラインゲームの様に競争に参加する学習者が,それぞれの学習者の画面上で同一に表示される.各学習者は参加している全ての学習者の回答状況をリアルタイムに確認できる.これにより,学習者の競争の意識を高めるとともに,学習者の学び合いを支援している. 教材(2)の特徴は,学習者個人の学習履歴と他の学習者の成績(正答数と回答時間)を順位としてインターネット上で閲覧できるようにした.これにより,繰り返し練習する学習の問題点である,学習意欲の低下を抑制できると考えた. 教材(3)の特徴は,念頭計算を練習する方法の1つとして,10のまとまりを繰り返し作成させる教材とした.方法は,画面上の無作為に選ばれた2つの数字(1から9)を枠の中に配置していき,10が作成できると画面上からその数が消えるようにした. これらの教材を用いた検証授業の結果,教材(1)では計算の正確さの向上,教材(3)では念頭計算の苦手な学習者の計算力の向上が見られた.また,教材(1)から(3)の全てにおいて学習意欲が向上する効果があることが分かった.次年度は,これらの教材を改善し,ネットワーク上で利用できる統合型の教材を作成し,その効果を検証する.
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