研究概要 |
本研究は,小学校における習熟度別学習の現状と課題を明らかにし,習熟度別学習を支援するネットワーク型の教材を開発し,その効果を検証することを目的としている。そのため,栃木県内の小学校427校に対して習熟度別学習の実施状況,学習効果,そして課題について調査(回答数334校,回答率78.2%)を行った。その結果,学年にかかわらず最も実施されている教科は「算数」(全ての学年で95.7%以上の割合で実施)であることがわかった。また,習熟度別学習の指導方法の1つとして,コンピュータを活用することが望まれているにも関わらず,学習者の進度に適したソフトウェア教材が未整備であるという課題も明らかになった。そこで,「算数」の習熟度別学習を支援するために(1)10のまとまりを訓練する教材,(2)乗法九九の意味を量から修得させる教材,(3)学習者間の競争から乗法九九の回答速度と正確さを訓練する教材の3種類の教材を開発し,その効果を小学校での授業をとおして検証した。その結果,以下の結果を得ることができた。 (1)の教材を用いた結果,下位の学習者の正答数を向上させる効果が高いことがわかった。 (2)の教材を用いた結果,乗法九九を正確に修得と乗法九九の意味理解の深化が図れることがわかった。 (3)の教材を用いた結果,他者とリアルタイムで競争させる機能が,学習者の習熟度に応じて解答の正確さを向上させることがわかった。 以上のことから,本研究で開発した学習者の習熟度に応じた教材は,習熟度の低い学習者の学力の向上に有効であることがわかった。今後は,これらの開発した教材を広く活用できるよう広報活動を行うとともに,新たな教材の開発に努めていく予定である。
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