本研究では、ソフトウェア開発に比べて学習機会の少ないネットワーク管理学習について、学習者が容易にアクセスできる学習環境構築手法を提案することを目的としている。具体的には、学習者の自宅LANから遠隔地にある階層型LANへのアクセス環境を作り、このLANの構成を学習者が希望する学習テーマ(DNSサーバの構築など)によって変更することで、実践的な学習環境の提供を行う。この遠隔学習支援システムは大きく分けて次の3つから構成される。 (1)遠隔接続用インフラストラクチャ (2)Webを用いた遠隔操作インタフェース (3)LAN環境自動構築支援システム この遠隔学習支援システムでは、LAN構成が容易に増やせるよう、学習テーマごとにLAN設計情報を作成し、この設計情報からLANを自動的に構築することで学習環境を提供する。項目(3)がこの役割を担う。柔軟にLAN構成を変更するため、CPU、メモリなどの資源の範囲内において物理PC上で複数の仮想ホストの実行が可能な仮想計算機技術を用いて、LANの構成要素であるホストやルータを仮想ホスト、仮想ルータとして仮想計算機上に構築する。設計情報から作りだされた設定ファイルをこれらの仮想計算機上で更新し、VLANを用いて各計算機間で仮想配線を接続することにより、学習用LAN環境を構築する。平成18年度は(1)の構築を主として、インフラの整備と(2)のWebを用いた遠隔操作インタフェースの構築・実験を進めた。(1)については、リモート環境からのアクセスについて安定性を確保するのに時間を要したため引き続き調整を行っている。(2)の遠隔操作インタフェースでは、多くの学習者で限りある資源を有効利用するためのLAN環境の自動管理システムについてローカルエリアネットワーク内にて実験・評価を行い、EIAE2006にて成果発表を行った。
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