研究概要 |
本年度は,年度計画に基づき,大学入試センターにおいて行われている医学部・医学科の編入学者選抜用の総合試験の研究と連携して研究を行った。主に,(1)我が国の各大学の総合試験の導入状況の調査,(2)総合試験問題の試作,(3)試作問題の評価のためのモニター調査および分析,(4)総合試験と既存の教科・科目別試験との関連についての調査,等を行った。 導入状況の調査では,全体として総合試験を導入する大学の増加が見られた。また,学部系統別に見ると,社会性,実務性を要求されるような系統(医学,保健・看護,教育など)とそれ以外の系統とで導入状況に差が見られ,前・後期入試などの入試日程別に見ると,専門・特殊型の系統(理学,工学,医学など)とオールラウンド型の系統(教育,教員養成,家政など)との間に差が見られるなど,分野別の適性測定の観点から重要と思われる基礎的なデータを得ることができた。 次に,総合試験問題の試作およびモニター調査を実施することにより,総合試験で測定する能力・資質・適性に関する基礎データを収集した。試作問題は,理数系的な問題である「情報把握・論理的思考」と,文系的な問題である「コミュニケーション・読解・表現」の2種類に分類したが,問題をこのように分類した場合,両者の間の相関係数が,ほぼ0.5程度となり,適度な関係を持ちながら,異なる能力を測定していることが分かった。また,文系的問題よりも理数系的問題で得点の分散および項目の識別度が大きくなることが見られた。 総合試験と既存の教科・科目別試験との関連を主成分分析等の多変量解析を用いて分析した結果,総合試験で測られる能力と既存の教科・科目別試験で測られる能力とを分けるような,潜在的な因子の存在が示唆される結果が得られた。いずれも基礎データから基本的な結果を得るに留まっているので,次年度以降のさらなる分析および調査が必要である。
|