本年度は、日本における産業用ロボットの技術開発の歴史的研究に関して、次のことを行った。 1.文献の収集とそれに基づいた調査・分析。 今年度は、主として文献の収集とそれに基づいた調査を行った。収集した文献は、第一に、本研究に関する分析枠組みを展開させるためのもので、これには技術史・技術論に関する一般的な文献や、日本国外における産業用ロボットについての研究文献が含まれる。とくに、生産技術に関する技術史的研究には、本研究と理論的に関係するものが多く、大きな参考となった。他方、本研究の重要な論点である技術とそのユーザーとの関係についての研究についても文献を収集した。さらに関連分野の文献、とくにロボットと密接に関係するコンピュータの技術史についても文献を収拾した。 第二に、日本における産業用ロボットに直接関連する一次資料と二次文献の収拾・調査をおこなった。このテーマについての技術史的な観点からの研究はほとんどないが、1980年代にジャーナリスティックな書籍や雑誌記事が大量に生産され、中には重要な資料となりうるものがある。一次資料としては、業界団体の出版物、関連学会の技術的な雑誌論文などが重要なものである。 2.聞き取り調査。 本年度は、行った聞き取り調査の録音を書き起こし、分析する作業を行った。 3.フィールド・ワーク。 本年度は、予備的な調査をするにとどめた。 4.研究成果の発表。 研究発表を行うのは来年度からの予定であったが、文献資料に基づいた調査が比較的順調に進展し、なおかつ今年度の国際学会(Society for the History of Technology)の年会のテーマが本研究とよく適合するものであったため、発表することにした。
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