研究概要 |
本研究の第一の目的は,過去110万年のインドモンスーンの変遷史の解明を目指して,中央ヒマラヤに位置するカトマンズ盆地の古気候・古環境を高精度に復元することである.そこで,本年度は,1年目にカトマンズ盆地中央西部で掘削した,古気候を復元するために不可欠な基礎試料である最終氷期から現在までの長さ18mの連続ボーリングコアの花粉分析を50cm間隔で行った.コア試料のAMS^<14>C年代については,約3m間隔に選定した計6個の試料を測定中である.さらに,最終氷期から現在までの古カトマンズ湖の変遷史を明らかにするために,カトマンズ盆地中央〜東部の地表露頭調査を約17日間行った. これまでに花粉分析をしてきたカトマンズ盆地中央部で得られた長さ218mのラビバーワンコアは,約70万年前以降の堆積物しか含んでいないことが,古地磁気層序学的研究および花粉分析から得られた湿潤・乾燥気候の指標花粉の変動曲線をスペクトル解析することによって明らかにされた.そこで,過去110万年のインドモンスーンの変遷史の解明を目指して,盆地南部のチャンピィで掘削された長さ113mのコア試料(過去110万年間の湖成堆積物)を用いて0.5〜1m毎に花粉分析を行った. 第2の目的である古気候を具体的な数値で示すために,カトマンズ盆地の低地部と盆地北西部地域で植物採集および表層試料を採取した(現地調査約9日間).また,表層試料中の花粉だけでなく,現在の空中花粉の散布状況を知るために,先行調査として盆地中央部で空中花粉を約7日間採取し,分析を行った. 花粉分析によって復元した約20万年前から1.5万年前までの古気候変動記録を,共同研究者によって行われた鉱物・粘土鉱物分析,有機地球化学分析の結果と比較・検討し,カトマンズ盆地の古環境を詳細に復元し,それらについて国内・国際学会および論文等で発表した.
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