近年地方圏においても少子化が進み、農家の次男、三男などの「潜在的他出者」は大きく減少し、人口流出は人口減少の主たる要因ではなくなりつつある。地方圏においても今後は、出生力低下と。「多産少死」世代の加齢に伴う死亡数増加がもたらす自然減が、人口減少の主たる要因となる。 以上の問題関心から本研究では、地方圏を対象に、市町村あるいはそれよりも小地域のスケールで、出生力の地域差を把握し、その地域差をもたらす諸要因について解明することを目的とする。具体的には、市町村別の既存統計や調査データの分析を行い、それに加えて、とくに子ども数の多い地域では聞き取り調査等の現地調査を行う。 主たる研究対象地域としては、47都道府県中最も合計特殊出生率が大きい沖縄県を選定した。データ分析から、沖縄県の中でも本島南部地域および離島地域においてとくに出生率が大きい傾向がみられたため、研究初年度である平成17年度においては、本島南部地域を対象として実態調査を行った。また平成18年度においては1998〜2002年において合計特殊出生率が全国で最も大きかった多良間村において実態調査を行った。具体的には、役場の次世代育成支援政策担当者からヒアリングを行い、また保育所・幼稚園において職員や児童の父母に対してインタビュー調査を行った。その結果、伝統的な男児選好が近年においてもなお出生率を押し上げる要因となっているものの、徐々に弱まりをみせつつあること、高齢者も含めて自宅外就業者が増えていること等に伴う育児資源の脆弱化が沖縄においても進行していること、等の知見を得るに至った。ただ、多良間村においてはこれらの変化がまだあまり進行していないため、出生率が未だに高水準にあると考えられる。
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