本研究の目的は、ヨーロッパにおける韓国と日本企業の企業内ネットワークからみたヨーロッパの国際的都市システムを明らかにすることである。分析に際しては、企業内ネットワークとして、事業所網(本社-支社・駐在員事務所間結合)、そして企業グループ網(親会社-子会社間結合)に着目し、韓国・ヨーロッパの都市間結合依存関係、日本・ヨーロッパの都市間結合依存関係をそれぞれ分析し、国際的都市システムを形成する要因を明らかにするとともに、アジアの国際的都市システムとの違いと共通点を明らかにする。 そこで、まず平成17年度の研究では、次の二つの研究を行った。まず、既存資料をもとに、韓国企業と日本企業の企業内ネットワークに関する基盤データを構築した。そして次に、韓国企業の事業所網・企業グループ網を事例に、都市階層の変化や韓国・ヨーロッパの都市間結合依存関係による国際的都市システムの結節構造を分析した。その結果、次の4点が明らかになった。 第1に、韓国企業の企業内ネットワークの構築によって形成されたヨーロッパの都市階層は、年度別変化が少なく、比較的に安定した構造を持っている。第2に、韓国企業の海外進出によるヨーロッパの都市階層の秩序と都市評価は、事業所・子会社といった「企業の進出形態」別に異なる。第3に、韓国企業の事業所・子会社配置とでは、中心リンク結合度への依存度が非常に高い。第4に、韓国・ヨーロッパ間の国際的都市システムは、韓国の首都圏企業の本社・親会社とヨーロッパの支社・子会社といった企業内ネットワークの展開によって構築されてきた。 以上の結果から、韓国・ヨーロッパ間の国際的都市システムは、高次階層の都市ほど互いに結合を強化するとともに、低次階層の都市を支配する垂直的システムであること、そしてアジアの国際的都市システムと類似した結節構造を持つことが明らかになった。
|