1.レビューの継続 疾病の時空間的なモニタリングと予測に有用と考えられるクラスター検出および予測に関わる技法のレビューを継続して実施した。前年度ではクラスター検出に関する技法と地理的加重回帰法との関係を中心に検討したが、可変バラメター法についてはカーネル回帰を援用する方法以外にも様々な方法が提案されており、その研究整理が不十分であったためである。具体的には、階層ベイズ法によるパラメターの空間的自己回帰過程のモデル化、および、パラメターの2次元的な変異に関するスプライン関数を利用した条件付可変パラメター・モデリングである。後者のアプローチは、地理的加重回帰法の代替的アプローチとしても有用な方法として利用できる。 2.技法開発 時間と空間の2重のカーネルを利用した密旋回の推定、および可変パラメターの推定をめぐり、その理論的・実践的な手法を整理。プログラミングした。ただし、レビューで明らかとなった、他の可変パラメター・モデルとの比較は現段階では十分になしえていない。 また、視覚化の方法として、空間を2次元平面に時間を高さ方向の次元とした3次元的な表現を、GISおよび3次元視覚化ソフトを利用して実施した。この方法は、流行の時空間的な推移を連続的にみる上で有用であるが、既存の3次元GISソフトでは色の透過処理や任意の時空間平面で切った断面図の表示を行うことが難しく、現時点では3次元視覚化の専用ソフトに頼らざるをえない。 3.データ整備 感染症サーベイランスの資料とともに、犯罪統計での利用についても検討し、ひったくりのような多発する犯罪についても、「流行の監視・予測」という考え方が有用であると考え、最終年度での利用を前提に、資料の整理および警察関係者との意見交換を行った。
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