研究課題
本年度は粒子液化捕集装置とXAD樹脂カラム、及び溶存有機炭素検出器を統合した親水性及び全水溶性有機エアロゾルの実時間測定システムを構築した。このシステムは時間分解能6分での自動連続測定を可能にした(全水溶性有機エアロゾルを2.5時間、親水性有機エアロゾルを3.5時間、交互に測定)。この測定システムを用い、東京大学・先端科学技術研究センター構内にて精度評価のための実大気有機エアロゾルの質量濃度測定を行った。測定精度としては±10%の精度で測定が可能であることがわかった。この測定装置を用いて、平成18年7月に中国・広州においてエアロゾル観測を行った。この際、加熱分離法による炭素分析計(元素状炭素(EC)・有機炭素(OC))によるEC/OC測定を同時に行い、本研究で開発した測定システムによる測定結果との比較を行った。異なる測定手法であるにもかかわらず、OCとWSOCの短時間変動はよく一致し、観測点におけるOCに占めるWSOCの質量割合は約70%、そのうち親水性成分と疎水性成分はほぼ同程度存在することが明らかになった。OCに占める各々の成分群の寄与を定量的に分類することは、東アジアにおける2次有機エアロゾル生成機構や雲粒生成を通した地球の放射収支に関する重要な情報を提供する。さらに室内実験として親水性有機成分、及び疎水性有機成分の標準物質水溶液をオフラインでXAD樹脂カラムに通水し、XAD樹脂カラムによる透過・吸着効率を詳細に調べた。その結果、本研究の使用条件下では、低分子カルボン酸、アミン、糖類などの有機成分はほぽ100%の透過効率で検出され(親水性有機成分)、高分子カルボン酸、芳香族炭素、フルボ酸、フミン酸などの相対的に高分子成分は透過効率が0%で本装置では疎水性有機成分に分類されることを確認した。
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ページ: doi:10.1029/2006JD007056
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