研究概要 |
本研究では,降水・大気中水銀の化学形態別情報の取得を目的とし,本年度は,多点観測に適用可能な降水中水銀の化学形態別計測法に関する検討を継続して行うとともに,大気中水銀の化学形態別計測法に関する検討を行った。 【隆水中水銀の化学形態別計測法】 金属硫化物を溶存水銀捕集剤として用いる実験において,水銀濃度をng/Lレベルとした場合,溶液中水銀初濃度を正確かつ精密に測定することが困難であったが,実験に用いる溶液の一部を分取し,酸化剤を少量添加することにより測定可能とした。本手法を用い,ng/Lレベルの水銀捕集条件を検討したところ,硫化亜鉛0.1gを親水性PTFE製メンブレンフィルター(直径47mm,孔径0.2μm)に積層させ,このフィルターに溶液28mL/min以下で通液するのが最適であった。これを用い,あらかじめメンブレンフィルターで粒子状水銀を除去した降水に含まれる溶存水銀の定量を行ったところ,良好な結果が得られた。 また,ポリチオアミドが,水銀吸着容量ならびに吸着速度において市販水銀吸着剤に勝っており,またアルカリ性条件下で塩化スズ(II)などで還元することにより水銀を金属水銀蒸気として定量的に気化脱離可能である,優れた水銀捕集剤であることを認めた。今後,水銀の分離捕集剤としての応用が期待される。 【大気中水銀の化学形熊別計測法】 金アマルガム水銀捕集管の前に石英繊維フィルターを装着することで,粒子状水銀とガス状金属水銀とを簡便に分別捕集可能であり,石英繊維フィルターおよび捕集管をそれぞれ加熱気化原子吸光分析に供することにより,定量可能であることを認めた。得られた粒子状水銀定量値は,精密さの面では若干問題が残ったが,ハイボリュームエアーサンプラーを用いて捕集した場合の定量値とほぼ一致しており,粒子状水銀の簡易定量法として有用であると考えられた。
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