平成18年度(2年目)は、移流環境下にある生態系モデルの解析手法の確立とその計算機環境構築のための研究において、次の成果を得た。 1)S-system方程式解法による数値計算性能の評価 固定化酵素反応における真の速度パラメータの決定問題を例に、S-system方程式解法を用いた非線形連立方程式の解を用いることで、非線形連立方程式の解収束空間がニュートン法に比べて飛躍的に広がることを示した。本数値計算手法の特性は、移流拡散方程式を粒子法で解く場合に、その収束性を高めることができると期待される。 2)教育用情報端末を利用したクラスタシステムの構築 本研究の最終目的とする移流環境下にある生体モデルの粒子法解析を行うための計算機環境として、教育用情報端末室の端末群を利用した高性能クラスタシステム構築した。最大32並列のMPI粒子法プログラムによる粒子法数値解析の結果は、良好なパフォーマンスを示した。 3)S-system方程式解法による半導体気相成長法への応用研究 本年度の研究成果のひとつであるS-system方程式解法の高い収束性能の知見は、半導体気相成長法における、非線形連立方程式の数値解に適用された。半導体の気相成長の熱力学モデルにおいて導出される非線形方程式は、その非線形性の強さから、ニュートン法による数値解では、適切な職条件の設定が事実上不可能となり、1次の収束速度を持つ限られた数値計算手法のみが利用されていた。本研究の成果は、2次の収束速度を持ち、実用可能な初めての数値計算手法である。
|