研究概要 |
自然起源および人為起源の揮発性の高い有機化合物のいくつかについて、その大気中における分解・消失過程を解明するため、真空紫外レーザー誘起蛍光分光法と、フーリエ変換赤外分光法を用いた室内実験を行った。大気シミュレーションモデルに用いるための反応速度定数や反応生成物の量子収率を高精度に計測した。CH_3OH,C_2H_5OH,n-C_3H_7OH,i-C_3H_7OHと塩素原子の反応速度定数(295K)を、それぞれ(5.35±0.24)×10^<-11>,(9.50±0.85)×10^<-11>,(1.71±0.11)×10^<-10>,(9.11±0.60)×10^<-11>cm^3molecule^<-1>s^<-1>と決定した。また、世界的に冷媒等として汎用されている代替フロンCH_3CHF_2(HFC-152a)と、塩素原子およびOHラジカルとの反応速度定数(295K)を、それぞれ(2.54±0.25)×10^<-13>,(3.08±0.62)×10^<-13>cm^3molecul^<-1>s^<-1>と決定した。NO_xのない極めて清浄な対流圏では、放出されたHFC-152aの酸化反応により、COF_2分子がモル収率97±5%で生成されることが明らかとなった。NO_x共存下では、COF_2の生成モル収率は38%まで低下し、残りの62%はCH_3C(O)FおよびCH_3CF_2ONOであることが分かった。揮発性ハロゲン化炭化水素の193nm紫外光分解反応で生成する塩素原子の量子収率は、CHCl_3,CH_2Cl_2,CF_2Cl_2,CFCl_3,CHFCl_2について、実験における偶然誤差の範囲内ですべて1であることが初めて明らかになった。CCl_4については、1.41±0.14と決定された。CCl_4の紫外光分解では、Cl原子の直接的な生成過程と、CCl_3ラジカルの逐次的な単分子解離によるCl原子の生成過程が混じっていることが示唆された。
|