研究概要 |
1.衛星観測データの解析:(1)Aura衛星に搭載されているマイクロ波放射計(EOS-MLS)の水蒸気と氷水量データを用い、アジアモンスーン域における水蒸気変動を定量的に解析した。その結果、プレモンスーン期(3〜6月;乾季から雨季への遷移期)に多く発生する擾乱現象(竜巻を引き起こす小規模な積雲対流活動など)が成層圏に流入する水蒸気量に影響を与えていることがわかった。この結果を踏まえ、高層大気観測を当初予定していた最盛期(7〜9月)からプレモンスーン期に変更した。(2)次に熱帯の上部対流圏から下部成層圏に流入する水蒸気量の指標となる熱帯の巻雲に着目し、中分解能撮像分光放射計(MODIS)の雲データを用いて2002年9月の南半球成層圏突然昇温による熱帯の巻雲分布への影響を調べた。突然昇温により熱帯の下部成層圏より下層の上昇流が強まり、上部対流圏が断熱的に冷却され、巻雲が発生していた。また上昇流強化による積雲対流の形成によって上部対流圏が冷却され(ケルビン波応答)、突然昇温消滅後約2週間巻雲が維持されていた[Eguchi and Kodera,2007]。 2.高精度湿度計を用いた高層大気観測の実施:1で得られた衛星データの解析結果をうけ、バングラディッシュ・ダッカにおいて、ラジオゾンデ搭載鏡面冷却型温湿度計(SnowWhite,Meteolabor社)を用いた高層大気観測をプレモンスーン期(3〜5月)に6回、モンスーン期(6〜7月)に4回実施した。測器が正しく作動しなかったプレモンスーン期の1回を除き、高度約25kmまでの水蒸気の鉛直プロファイルデータを9つ取得することができた。また一般的に用いられている湿度計(H-Humicap, Vaisala社)も同時に放球し、湿度計間の比較を行った。湿度計のデータと2種類の衛星観測データを比較した結果、各衛星測器が得意とする水蒸気データ取得高度で、不確定性範囲以内(±9〜15%)で比較的精度の高いデータが取得されていた。
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