研究課題
本研究では、環境への人為的なインパクト(例えば森林の伐採)が森林や流域環境に与える長期的な影響を予測できるモデルを構築することを目的とし、1)伐採後の経過年数に沿った植物体・土壌における炭素・養分の蓄積量の把握、2)伐採後の経過年数に沿った森林の生産量・養分循環量の把握、3)土壌-植物相互作用系を介した物質循環機構のメカニズムの解明、4)施業履歴など人為的インパクトの定量化および影響評価を統合し、流域環境の応答予測モデル作成と応用を行なう。本年度は、京都大学和歌山研究林およびその周辺の私有林において伐採後4年、14年、29年、41年、88年のスギ人工林に20m×20mの調査区を設けて毎木調査を行い、森林構造を明らかにした。毎木調査の結果および既存のアロメトリー式を用いて現存量の推定を行った。植物体および土壌試料の採取・分析を行い、炭素・窒素の蓄積量の推定を行なった。リタートラップ法によりリターフォール量の測定を行った。また森林所有者への聞き取りを行い、過去の施業履歴の概要を把握した。以上の観測データとPnET-CNモデルによるシミュレーションでの予測結果との比較を行ない、既存のモデルの日本での適用の可能性について検討を行った。その結果、多くの観測項目については、PnET-CNによる予測精度は高いことが明らかとなったが、一部の観測項目に関して予測値と大きく異なる結果となり、今後はパラメーターの変更やモデルの改良などを通して予測精度を上げる必要があることが明らかとなった。以上の成果の一部は、2006年の日本森林学会において学会発表を行う予定である。また残った試料の分析や解析が終わり次第、学術雑誌への投稿を検討している。
すべて 2005
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Trees 19
ページ: 477-481
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ページ: 269-274