本研究では、環境への人為的なインパクト(例えば森林の伐採)が森林や流域環境に与える長期的な影響を予測できるモデルの構築することを目的とし、1)伐採後の経過年数に沿った植物体・土壌における炭素・養分の蓄積量の把握、2)伐採後の経過年数に沿った森林の生産量・養分循環量の把握、3)土壌-植物相互作用系を介した物質循環機構のメカニズムの解明、4)施業履歴など人為的インパクトの定量化および影響評価を統合し、流域環境の応答予測モデル作成と応用を行なう。本年度は、京都大学和歌山研究林およびその周辺の私有林において得られたデータの解析を行い物質循環機構のメカニズムの検討を中心に行った。また森林所有者への聞き取りにより得られた過去の施業履歴からシミュレーションにおける人為インパクトのシナリオ検討を行った。これまでの観測データとPnET-CNモデルによるシミュレーションでの予測結果との比較を行ない、成果の一部を2006年の日本森林学会において学会発表を行った。 これまで研究で、シミュレーションによる多くの予測項目については、PnET-CNモデルの予測精度は高いが、一部の観測項目に関して予測値と大きく異なることが明らかとなった。メカニズムの検討から、特に高齢林分における土壌窒素無機化や細根生産などのプロセスがモデルでは十分に予測出来ないことが明らかとなった。今後は既に採取された試料の分析や解析を進め、分析データが揃った段階で、モデルに改良を加え、最終的な影響評価モデルの完成を目指す予定である。
|