研究課題
蛍光増白剤は、製品を白く鮮やかに見せるために使用する染料の一つで、衣料用合成洗剤、衣類、紙などに添加されている。高濃度では人体に有害な物質で、現在、内分泌攪乱作用は報告されていないが、原料となるスチルベンには内分泌撹乱作用があり、生態系への影響が懸念される。環境水中での蛍光増白剤の光分解について検討するため、室内での模擬太陽光(紫外線)照射実験を行い、蛍光増白剤の分解性について検証を行った。実験の結果、蛍光増白剤の光分解は純水で以下の式にしたがうことが分かった。N/NO=exp (-sI)N:分解後の蛍光増白剤濃度、NO:初期蛍光増白剤濃度、s:分解係数、I:紫外線照射量Sは、蛍光増白剤DSBPで0.24、DAS1で0.13であった。間接的な光反応として、硝酸イオンやフミン物質から光反応により生成するOHラジカルとの関係に注目した実験も行った。実験結果は、硝酸イオン濃度やフミン物質量に依存した蛍光増白剤の減少は見られず、間接光反応の寄与が極めて低いことが明らかとなった。琵琶湖を対象としたフィールド調査からは、表層で硝酸イオンや亜硝酸イオンが増加する3月、4月にOHラジカルの生成が認められる一方、硝酸イオンや亜硝酸イオンが枯渇する夏季にはOHラジカルの生成がほとんど認められなくなった。フミン物質は年間を通じて琵琶湖水中に存在することが確認された。これらの状況から、琵琶湖では間接光反応のポテンシャルが春季に大きいと考えられるが、蛍光増白剤の光分解にはあまり寄与していないと考えられる。琵琶湖表層水での蛍光増白剤濃度は、春から夏にかけて濃度低下が認められることから、その減少は直接光分解だけによるものと考えられた。次年度は蛍光増白剤の光分解産物について検討する予定である。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Korean Journal of Limnology 38,Special issue
ページ: 62-66
滋賀県琵琶湖・環境科学研究センター 試験研究報告書 1
ページ: 78-83