本年度は主に、廃棄物・リサイクル政策の環境経済統合評価を行うための基礎調査として、(1)産業連関分析に廃棄物処理やリサイクルを含めた研究と、(2)廃棄物・リサイクルに関するLCA研究に注目し、文献および資料収集を行った。 (1)では、特に廃棄物産業連関表を用いた研究と環境分析用産業連関表を用いた研究に注目し、当該分野における研究状況と課題を整理した。その結果、これらの分析手法を用いることにより、動脈部門と静脈部門との相互関係が定量化され、廃棄物処理やリサイクルの方法によるCO2排出量や最終処分量等の環境影響と雇用量等の経済影響が分析可能なことがわかった。一方で、CO2排出量や最終処分量以外のエネルギー資源投入量などを含めた研究はまだ少なく、今後研究の可能性があることが明らかになった。 (2)では、連関する内外の研究報告や論文に注目し、当該研究分野における現状と課題を整理した。その結果、製品や特定のリサイクル単位でのLCAは数多くなされ、研究蓄積が豊富であるが、廃棄物処理政策に関するLCAはまだ少なく今後研究の可能性があることがわかった。この点については、例えば産業技術総合研究所によって開発された環境経済統合評価手法であるLIMEの地域LCAへの適用などが参考となると思われる。 一方で、LCA研究に産業連関分析を用いたり、産業連関分析にLCA的な視点を取り入れたりというように、両者を併用した研究が増加する傾向にあり、両者の融合が現在の重要なテーマになっていることもわかった。来年度はこうした研究の現状と課題を踏まえ、廃棄物・リサイクル政策を対象とした環境経済統合評価のための手法の開発に取り組みたい。 なお、本研究で行った既存研究のレビューの一部については、「廃棄物経済学のフロンティア」と題して、環境経済・政策学会の10周年シンポジウムで報告した。
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