研究概要 |
自然再生事業による水草帯の復元がユスリカ幼虫の多様性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、霞ケ浦の水草帯と砂浜において堆積物上および水草上のユスリカ幼虫の動態を調査した。 調査期間を通して、堆積物から17分類群のユスリカ幼虫が採集された。水草のない地点ではオオミドリユスリカが全底生ユスリカ現存量の70%以上を占めた。 水草帯の堆積物ではハイイロユスリカが優占したが、採集場所や水草の種類によって当該ユスリカ種が全体に占める割合は異なった。水草帯の最も岸際では他の地点と比較して溶存酸素量が極めて低かったが、この場所の堆積物からは酸素欠乏に強いヒシモンユスリカ幼虫が特異的に出現した。 水草からは12分類群のユスリカが採集された。各水草での優占種は、ミクリではハイイロユスリカ、ヨシではメスグロユスリカ、そしてマコモではツヤユスリカ属の一種Cricotopus sp.であった。これら水草種間での優占ユスリカ種の相違は、植物の形態の違いによるものと考えられた。またヨシと比較してミクリ上ではハイイロユスリカ幼虫の大型個体が多かった。この理由は、ハイイロユスリカ幼虫は大型になるとヨシ根の部分に移動するが、ミクリは葉が何層にも巻いており、葉の間に潜りこむことで当該種の大型の個体が生息できたものと考えられる。 新しい水草上では,環境中の枯れた水草と実験の枯れヨシ上のものと比べて全幼虫個体数に占めるCricotopus sp.の割合が高かった。この理由は,ユスリカ幼虫の餌資源や営巣基質となる付着藻類の組成が新・旧の水草で異なっていたためと考えられた。
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