海底熱水や冷湧水活動は地球のマグマ活動に伴う普遍的な現象であり、海洋や大気に放出される化学成分は膨大である。これらを直接利用する、もしくは二次的に利用する微生物群集の地球表層に及ぼす生物的な影響は当然大きいと予想されるにもかかわらず、その分布さえも全くと言っていいほど明らかになっていない。本年度は、地質学的および地理的に異なる条件下にある深海熱水(水曜海山、沖縄トラフ、南部マリアナ背弧拡大軸)や冷湧水噴出域周辺(日本海)のプルーム探査およびプルーム水採取を行い、ドメインレベルでの微生物群集構造のため、Rainbow-FISH法(Sunamura and Maruyama 2006)を開発し、定量的なFISH-DC法(Maruyama and Sunamura 2000)、CARD-FISH法との併用により熱水プルーム中微生物群集構造を測定した。その結果、水曜海山、沖縄トラフ、南部マリアナ背弧拡大軸の熱水プルーム中では、周辺海水に比べ1.5〜3倍程度の微生物細胞数の増加が認められ、主に、Bacteriaが増加していることが明らかとなった。また、水曜海山熱水プルーム中では、最大で一日1mLあたり30000細胞が生産されていることを明らかにした。一方、冷湧水プルームでは、微生物細胞の増加は認められず、メタン酸化細菌もほとんど検出されなかった。これらの微生物群集構造をより詳細に解明するために、DGGE装置を購入し、DGGE法を用いた比較群集解析を開始した。
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